50代前半の男性相談者様が事務所に来られました。
「友人に聞いたのだけどこれって解約できるの?」
差し出されたのは互助会の加入者証です。
「新しいですね。まだ満期にはなっていないものですか?」
「そうなんです。それでも解約可能なんでしょうか。」
「はい。もちろん。」
満期になっていなくても、納めた掛金の額に合わせ規約の定めた手数料は引かれますが、掛金は返金されます。ただし、何回目までは「払戻し無し」という規約のある互助会もあります。
「結婚式や衣裳のレンタルとか、ご葬儀以外にも色々サービスをお持ちの互助会もありますよ。それに返金は手数料分引かれ・・・。」
「ええ。解っています。でも、どうしても解約したい理由があるんです。実は互助会に入会したのはこれが2回目なんです。」
よく、内情をおうかがいしますと・・・
一回目は相談者様のお父様が掛金満額30万円で葬儀ができると聞き互助会に入会されました。お父様のお気持ちとしては自分の葬儀代の心配は、残された妻や子にはさすまいと互助会に入会されたのでしょう。生前中に、喪主になるであろうご相談者様に、葬儀は互助会に頼むよう伝えておられました。コツコツと6年ほどかけて、やっと満期になったところでお亡くなりになったそうです。
しかし、いざ葬儀が終わってみると・・・。100人近く会葬に来られた葬儀が30万円で済むはずもなく、本当にその費用がかかったにせよ、どうしても納得がいかなかったそうです。
入会の際、わざと騙したのではないにしろ葬儀の費用はこれで済むと故人は思い込んでいたのですから、遺族と互助会側との信頼関係が生まれるはずもなく、葬儀費用に納得がいかないのもしかたのない事でしょう。
最後に「親父が、騙されたまま死んだことが悔しい。」と、おっしゃられました。
「一回目はお父さんが名義人。それでこの新しい加入者証は?」
「葬儀後すぐに、その場でまた私が勧誘されて入ってしまったものなんです。」
「え!」
葬儀後すぐ、疲れてフラフラの状態で、何が何だかわからないままにまた入会させる。
あまりの強引ぶりに、加入者証が次回葬儀の契約書のようにも見えてきました。
「次にもし葬儀をする場合は、他の葬儀社にお願いしようと決めているし、互助会とはもう関わりたくないので、絶対に解約したいんです。」
「わかりました。お手伝いさせていただきます。」
そのあと、必要な書類とともに互助会へ解約を申請しました。
経済産業省では返金の時期について、割賦販売法施行規則(前払式特定取引業者の約款基準)で、解約日から「45日以内にできるだけはやく」と返金の時期について定めてあります。
それ以降になるとおかしいことになりますが、相談者様の口座に振込があったのはひと月半後のことでしたので、スムーズに手続きが完了したと言えるでしょう。
合計168,000円の掛金で、互助会より解約手数料を引かれて130,400円の返金がありました。
後日、「ありがとうございました。解約できること、友人にも伝えておきます。」
とのお言葉を頂くことができました。
「10年前に主人のお葬式したんだけど。そこの○○老人憩いの家で葬儀してしまったのよ。」
女性から、互助会解約のご相談を受けました。
相談者様のお住まいには近くて広い地域の自治会館があり、便利で費用も抑えられるので、町内のほとんどの方はそこを利用されます。
「そのとき、互助会さんでお願いしなかったのですか?」
「それがね。その会館は互助会さん使えなくなってしまってね。」
相談者様は入会した当初から、その地域会館で葬儀を行ってもらおうと考えていたのですが、数年後にその互助会がその会館でボヤを出してしまい、その互助会は出入り禁止になってしまったようなのです。
故人は生前からこの会館を希望されていたこともあり、他の葬儀社にお願いして葬儀は済ませたものの、掛金のことはなんとなく気になったまま放置しておられたようです。
「入った当初は、そんなことになるなんて思わなかったからね。」
「そうですよね。そんなことまで予想がつかないですよね。」
「全部で15万円にはなると思うのよ。」
「満期になってから20年以上経ってらっしゃいますね。」
「あの頃の15万を今の貨幣価値に直したら、いくらくらいになるのかしら。う〜ん。生命保険は入ってすぐに満額の保証がつくけど、互助会の掛金は払った金額だけのサービスしかないし、そう考えると全額帰ってきても損した気分よね。」
「特典がつくにせよ、使用するまでの何十年間のリスクの方が大きいですよね。」
「そうよね。でも、いくらか年利がつくんじゃなかったかしら。」
「はい、確かにあるみたいです。」
満期の翌年から、規約により年利何%かで割増金が毎年ある場合があります。
『6%を永続的』や『7%を5年間』とか、同じ互助会でも入った年により違います。
「やっぱり。じゃあ、返金もその分増えるかも。」
「いえいえ、それは『それ相応のサービスがつきます』ということが多いみたいですよ。」
「あら、じゃあ、使わないとその数字も本当かどうかよくわからないわね。解約手数料が引かれるのは知っているけど、これから使う事もなさそうだし解約するわ。」
解約希望のほとんどが掛金をしていたこともすっかり忘れていて、加入者証がどこにあるのかもわからないというパターンです。
しかし解約可能な事実を知ると、互助会の倒産などのリスクを持ちながら、ずっと置いておくよりはと、解約される方がほとんどです。
今回は、故人名義の加入者証を奥様が申請人となり解約申請致しました。
合計150,000円の掛金で、解約手数料分が互助会より引かれ、返金が122,750円となりました。申請日からの返金までの期間は35日間となりました。
「すっきりしたわ。ありがとう。」と後日お言葉を頂きました。
「知り合いには内緒で、解約したいんです。」
入会した理由に、互助会勧誘員が知り合いで、強く勧められ断りきれなかったからという方が多くいらっしゃいます。
この方も勧誘員がお知り合いということで、約款の説明もほとんど聞かないまま入会してしまったそうです。
他の互助会倒産のニュースを聞いて恐くなり、解約しようと互助会に電話をしたが、担当者が休みだからなどとなかなか電話が取り次いでもらえず泣き寝入りしようかと思っていたところのご相談でした。
「そのお知り合いには頼めそうもないですか?」
「もう辞めているみたいだし、わたしとしては騙されたと思っているから、今更顔も合わせたくないのよ。」
「わかりました。では書類は郵送するなどして手続きを行っていきましょう。」
「でも、こまった事に加入者証を無くしてしまって・・・。」
「あら、ではまず、加入者証の再発行からですね。少しお時間かかるかと思いますが。」
「そうか、再発行を先にしたらいいんですね。よろしくお願いします。」
再発行後すぐに手続きを行い、ご本人様を申請人として解約申請しました。
合計340,000円の掛金で、返金は互助会より手数料を引かれて291,900円がありました。
全体で2ヶ月近くかかりましたが、ご相談者様からは後日「ありがとうございました。」とお言葉を頂きました。
「『これで、お葬式ができる』って、おばあちゃんが信じている。本当かしら?」
そう言って、女性が持ってこられた互助会会員証は、「総額3万円コース」でした。
「いや、、、、火葬料金だけでも市内なら1万円。火葬場までの寝台霊柩車だけでもこの費用はかかると思いますよ。どう考えても、皆さんが考えておられる、お通夜・お葬式というような一般的な流れは難しいのではないでしょうか。」
「そうですよね。食事代だけでもいくらかかるか。でも信じてきかないんです。」
会員になったのは、昭和56年。
今の1万円はその頃は1.8倍の貨幣価値があるとは言われていますから、3万円×1.8で5.4万円くらいの価値があったとして、また、互助会では年利(お金ではなくサービス)がつく場合もあるようですが、それも微々たるもの。
「おばあちゃんは、『近所のひとも、軒並み互助会に入ったから、間違いない。騙されてない!』って言ってるの〜。」
困った様子の女性に、お葬式のお金のかかりかたなどの資料をお持ち帰り頂きました。
数日後・・・
「やっと、納得したみたい。解約お願いします。」
騙すつもりはないにせよ、そう思っている人がいるという事実は、互助会の入会時の説明や入会後のフォローの無さにあると思います。
今でこそ、事前相談は当たり前にありますが、そのころは「お葬式のことなんて縁起でもない。」と「右に習え」の時代。それをいい事に詳しい説明もせず「皆さん入られていますよ。」の一言で入会させるとは、葬儀後に問題が多発しているのも納得がいきます。
「解約は損するって、言われたぞ!」
すでに、解約手続きを始めていた男性からお怒りの電話がかかってきました。「解約したほうが良いなんて言って・・・、よく話を聞いたら特典もたくさんつくって言うし、解約しないようにしたよ!」と、すごい剣幕です。
「そうですね。その互助会で葬儀をすると決めておられるなら会員になっていたほうが確かに得だと思います。でも、少しでも迷いがあるようでしたら、事前にお見積りを取ってみてはいかがでしょう。他の葬儀社さんと比べてみるのも参考になると思います。金額以外にも、担当者の対応のしかたからサービスの質も比較できると思いますよ。」とお話しして電話を切りました。
後日、「やっぱり、解約してきたよ。」と、男性がセンターに来られました。
地元の葬儀社さんに見積をお願いしたところ、地域の会館や火葬場併設式場などの公営の式場を利用したプランを勧めてくれ、予算内で収まるように丁寧な対応をしてくれたそうです。
「肝心の互助会では、『ご安心下さい』を繰り返すだけでなかなか見積書を作ってもらえなくてね。解約を臭わしてやっと作ってもらったんだけど・・・。」と、1枚の見積書を持ってこられました。そこには、「会員特典 式場使用料無料!」「会員様10%引」などの一見お得そうな文字が書かれてあります。
「でも、光熱費が二日間で5万円。サービス料6万円とか、よくわからない項目があるんですよね。聞いても何だかはっきりしないし。式場も見せてもらったけど、広くて立派過ぎて家族葬するにはもったいないないくらいで・・・。結局、地元の葬儀社さんが進めてくれたご葬儀のやり方が自分に合っていて納得いくから、互助会はその場で解約してきたよ。」と、話されました。
強い意志があれば、解約はご自分でも行えます。
意思が弱いと私どもが代行したとしても、途中で怒涛の如く説得され解約することができません。
なによりも、解約するという固い意思が必要なのです。
昭和55年9月、互助会「1,500円×60回 総額90,000円コース」に入会したAさん。勧誘者が友人だったため、契約内容の詳細は聞かないまま、安心して毎月積み立てを続けていました。
ちょうど2年がたった頃、その友人が再び訪ねてきて「この契約を解約して、新たにもう一度契約し直してもらえないか。」と言われたそうです。金額が高くなるのなら戸惑いますが「500円×60回 総額30,000円コース×3口」計90,000円と、毎月の支払いの額は変更にならないとのこと。まあ、別に構わないかと入り直しました。
後日満期を迎え入会したこともすっかり忘れていたころ、互助会会員証が引き出しの奥から出てきました。肝心のご葬儀は、お寺様紹介の良い葬儀社さんと縁ができ先日済ませたところです。解約したらお金が戻ってくるということを思い出し、あの友人とも疎遠になっているため、どうゆうふうに手続きして良いのか当センターに相談にこられました。
途中で契約を変更したケースは初めてでしたが、何とか解約までに到りつきました。しかし、落とし穴がひとつ。
ほとんどの互助会の規約として、解約した場合の返金は、初めの9回分(各互助会によって回数は違う)までは一切ありません。500円×10回(計5,000円)だけ掛けて解約した場合は9回目までカウントされませんので、残りの1回分500円から75円(例:手数料15%)引かれた425円だけが返金となります。5,000円掛けて425円だけになるのです。
この方の場合、自ら解約した訳でもなく頼まれて契約変更したにもかかわらず、最初の9回分と入り直した後の9回分の計18回分を引かれた額が返金されました。
「納得はいかないけれど、もう約款も紛失しているし、しょうがないわね。」
何年もかけて、積み立てして「しょうがない」で終わる。
悔しさだけが残る結果となりました。